東京・調布市深大寺の新居の、床座スペースでカスタールのラグをお使いくださっているバイヤーの山田 遊さん。後半は、実際にラグを使ってみた感想からお話を伺っていきます。

※前編はこちら

直に座って気持ちがいい。
ついつい手で触りたくなる質感

–– カスタールのラグの使い心地はいかがですか?

山田 遊さん(以下、山田) ここで仕事をすることが多いので、長時間ラグの上に座っていますが、すごくいいですよ。直に座っているから、全身でこの気持ち良さを感じられます。自然と目線が下がるので、オレンジやブルーの色合いやタフティングのディテールが見えると、あぁ、やっぱりいいなぁって。見ていて飽きないですね。

あと、ついつい手で触っちゃいます。シャリっとしたこの質感もいいですよね。それと、タフティングの密度が高いからか弾力があって、ふかふかというよりもぎゅっとしている。ショールームに伺ったときにラグを足で踏ませてもらいましたよね。そのとき、これはすごい!って感激したんですよ。

2階の床座スペース。山田さんは仕事の合間にここから空を眺めるのも気に入っているという

––ウールはあたたかいとイメージされる方が多いんですが、吸湿性と放湿性に優れるので、一年中さらっとしているんですよね。それと、カスタールのラグはほかのメーカーと比べると使う糸の分量が多く、重量があります。ラグやカーペットの世界では、重いほどに上質だとされているんですよ

山田 カスタールのラグ、重いですもんね。僕はほどよい厚みがあるラグが好きなのですが、この厚みがちょうどいい。当初、床座だから座布団を置こうかなと、候補も見つけていたんですけど、ラグを使い始めたらそれは必要ないなって思うように。そのくらい心地良い厚みです。

ラグ選びはタオル選びに似ているような気がします。僕は、質感や素材感はなめらかでボリュームと弾力のあるものが好き、色は濃い原色系が好きなんですが、カスタールのラグはそれに近い。この裏面に貼られている手書きの革のラベルも嬉しかったなぁ。たまにめくって眺めたり、友達に自慢したりしてるんです。これ、すごくない?って(笑)。

カスタールのラグは、できあがると必ず、製品名や完成日、職人名が手書きされたレザーラベルが貼られる。特注品である山田邸のラグには「SPECIAL」の文字が*

–– ラベルにも注目してくださって、ありがとうございます! このラグを選ぶにあたって、ほかのメーカーやブランドのものも比較検討されましたか?

山田 はい、もちろん国内外のさまざまなブランドと比較しました。素晴らしい素材を使っているとか、デザインが良いというブランドはありましたが、そのどちらも満たしているところはありませんでした。

カスタールは良い素材を使って、機能をしっかり満たして、それでいて冒険できるような色がそろっている。完成度が高いですよね。特に色は日本人にはない感性で、個性的でした。あのカラーを定番色として展開しているメーカーは、日本にはなかなかいないんじゃないかな。個性があるということは、他とは違うということ。僕はそういうものを、どうやって調和させていくかに興味があるし、好きなんです。

1階のキッチンとダイニング。1階はギャラリー機能があることから、床座の2階に対しあえて視線を高く設定し、カウンターテーブルに

ラグは“家具”。

–– 山田さんのお住まいでは、ラグが大事な役割をもっていることを知って嬉しいと同時に、驚いています。というのも、日本では住まいにラグを導入する人がまだまだ少ないんです。

山田 え! そうなんですか? 日本人はソファをもっていても床に座って過ごす人が多いようにも思うのですが、そういう場合はフローリングに直に座っているんでしょうか……。僕はもともとインテリアショップでバイヤーをしていたこともあって、ラグはソファや椅子と同様に家具だと思っているし、家の中にラグは必須だと考えています。

ラグは空間のなかに領域を作ってくれますよね。ここはくつろいでいい場所だということが明確になるというか。僕も2階の床座のスペースがもっとも落ち着ける。もしもここが椅子に座って仕事をする仕様だったら、間仕切りなどで閉めたくなる気がするけど、わざわざ仕切らなくても集中できる。視線の高さが変わって、ラグが空間をつくってくれるから、クローズドな雰囲気になるんだなって。

家の中に飾るものは、アーティストによる一点ものから工業製品までさまざま。一方、毎日使う生活道具は、この家に暮らし始めてからひとつひとつを吟味しているという

–– ラグや家具と同様に、この家で使うものは一から選んだのでしょうか? どんな基準で選ばれているのか教えていただけますか。

山田 はい、そうです。アートやオブジェなどの飾るものに関しては、選ぶ基準は仕事でのもの選びとほとんど変わっていません。デザイナーやアーティストの一点ものから工業製品、国内外・新旧を問わず、幅広く、フラットな目線で偏らないもの選びをしています。

変わったのは、道具の選び方。食器から家電、掃除道具まで、毎日使うものに関しては、かなり吟味しました。それまでは借家だったから、そこまでのこだわりはなかった。だから、以前の家で使っていたものは頑なに手放してきたし、引っ越し前に買い揃えたりもしませんでした。

だって、二俣さんが設計した空間って、ディテールがとことん吟味されているんですよ。そこで使うものも、ちゃんと吟味したかった。だから、この家に暮らし始めてからひとつひとつ買って、置いて、使ってみるという見直しをしているところです。

たとえば掃除モップは、あらゆる製品を比較検討したところ、以前の家で使っていたものをまた買い直すという嘘みたいな展開に(笑)。グラスはなぜかほとんどがジャスパー・モリソンのデザインのものだったり。こういうことを、この家でやりたかったんですよ。

左/浴室に選んだモザイクタイルは、安土桃山時代に美濃で焼かれた朽葉色の陶器「黄瀬戸」の色をイメージして選んだ 右/2階の床座スペースから洗面室を見る。右奥が浴室、右手前は階段室

–– おもしろい……! このお住まいでの暮らしは、ご自身の仕事にも大きく影響を与えているんですね。

山田 一方で、僕はずっとものが好きで、ものの知識もある方だし、バイヤーとしてきちんともの選びをしてきたつもりだったけれど、やや表層的で、使うというリアリティへの意識が低かった部分もあるなと振り返っているところです。でも今、家で使っているものは、家具も道具もオブジェもすべて、自信をもってお薦めできます。

–– 山田さんには、カスタールのラグの個性や素晴らしさを代弁していただいたような気がしています。あらためて、もの選びのプロである山田さんに選んでいただけたこと、嬉しく思います。今回は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

山田 遊さん

バイヤー

東京都出身。 南青山のIDÉE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、 フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役、 武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科客員教授、東京ビジネスデザインアワード審査委員長、グッドデザイン賞審査委員。国内外の店づくりを中心に、あらゆるモノにまつわる仕事に携わり、多岐に渡って活動を続ける。 2013年「別冊Discover Japan 暮らしの専門店」が、エイ出版社より発売。2014年「デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド」が、誠文堂新光社より発売。 これまでの主な仕事に、国立新美術館ミュージアムショップ「スーベニアフロムトーキョー」、21_21 DESIGN SIGHT「21_21 SHOP」、「GOOD DESIGN STORE TOKYO by NOHARA」、「made in ピエール・エルメ」、「燕三条 工場の祭典」などがある。 http://wearemethod.com



Interview with freelance buyer Yu Yamada, who has been using Kasthall rugs in his own residence, where he has lived since December 2022. In the second part of the interview, we asked him about impression of the rug in use and his perspective on selecting items.

When buying a Kasthall rug, Mr. Yamada compared it with various domestic and foreign brands. Although there were brands that used good materials or had good designs, Kasthall was the only brand that fulfilled both conditions. In particular, he thought the colours were unique, with a sensibility that Japanese people do not have, and that he could not find out in Japanese manufacturers.

Mr. Yamada usually sits directly on the rug in the floor seating space on the second floor of his house to work. Because the rug is densely tufted, elastic, and just the right thickness, he doesn’t need to put a cushion on it. This is why you can feel the comfort of the rug with your whole body. It also naturally lowers the eye level so he can enjoy the orange and blue shades and tufting details. He said the silky texture of wool is so comfortable that he can’t help but touch it.

For Mr. Yamada, rugs are one of furniture, same as sofas and chairs, and an essential part of his house. He also believes that rugs take on a role in creating areas within a room. The floor seating space on the upstairs with rugs is the most relaxing place for him, and it is a space where he can concentrate even though without partitions.



Yu Yamada
Buyer 

Born in Tokyo. After working as a buyer for Idée Shop in Minami-Aoyama, Yamada founded Method in 2007 and began working as a freelance buyer. He is currently the representative of Method Inc. In 2013, Yamada was featured in a special issue of the popular Japanese magazine Discover Japan, titled “Kurashi no Senmonten: Yu Yamada’s Tokyo Shopping Guide” (Ei Publishing). In 2014, Yamada published The Method of Shop Success (Seibundo Shinkosha). Yamada works extensively as a judge for various competitions, including the Good Design Award, and is active as a lecturer for educational institutions and local industries. His past works include: The National Art Center Tokyo Museum Shop (“Souvenir from Tokyo”), the 21_21 Design Sight Shop, the Good Design Store Tokyo by Nohara, Made in Pierre Hermé Marunouchi, and the Tsubame-Sanjo Factory Festival.
http://wearemethod.com/

Photographs:Satoshi Shigeta(except * & last photo)
Text:Kyoko Furuyama(Hi inc.)
Creative Direction:Hi inc.